日頃からご支援を下さる皆様のおかげで1月から12月までずっと充実した気持ちで過ごすことができました。有り難うございました。
以前から自身で手を動かして描いてみたかった図の一つが、我が国の全土における河川の流れを示す絵です。簡単な話に見えますが、絵にしてみると、国土全体を隙間なく大小の河川が覆っていることが分かり、これをコンピュータを用いて1枚の絵にしようとすると、コンピュータにとっては負荷の高い処理となります。下の絵は、国が直轄する河川を太線で描き、県や市町村など自治体などが管理する中小河川を河川ごとにの色で細線で描いたものです。この図からすぐに北海道から九州のどの地方においても大小の河川が満遍なく存在することが分かります。このことは、国土全体にふんだんに水が存在し、その結果、さまざまな生物にとって恵まれた環境であることを意味します。
韓国とアメリカのお土産を頂きました。旅先で思い出し、荷物が多い中でもお土産を持ち帰って頂き、本当に有り難うございます。
一夜にして新潟市でも50cmほどの積雪となりました・・・。
宇宙線を用いた堤防内部の透視技術の第二ステージの開始に向け、庄内川と揖保川の観測候補地を視察しました。中部地方整備局および近畿地方整備局の皆様のご協力に感謝申し上げます。
揖保川の視察にあたっては姫路に投宿しました。姫路駅を降りるとその正面には姫路城がそびえ、高い技術力とそれを400年以上も継承する日本という国の素晴らしさを目の当たりにしました。世界遺産に登録されて本年で30年の節目を迎えたことを記念し、ライトアップされた夜の幻想的な姫路城を見ることができたことは幸運でした。この城が築造された時代は、電気も電子もない時代ですが、木材と石材のみであれだけ大規模な建築物を高精度に組み上げた当時の技術には素直に感動しました。昨今、イノベーションというと、とかくハイテクに関心が集まりがちですが、ハイテクとローテクのどちらが優れているかではなく、姫路城は目的にぴったりと適合した手段を選択することこそがイノベーションの起点となることを教える好例でしょう。
信号処理を専門とする東京農工大学の田中聡久先生のご好意により同校において特別講義の機会をいただきました。熱心に聴講していただいた大学院生の皆様に感謝申し上げます。また、講義の合間に、田中先生より、東京農工大学における研究者の計画的な育成の制度、大学内起業、我が国の信号処理の研究の活性化のための活動の方法など示唆に富む話を聞くことができたことも大きな収穫でした。
2020年春より、各所の協力を得て、電波を用いた河川の観測法の開発を開始し、これまでの研究により、洪水時の河川を電波をどのように用いると何がどれほど測定できるかの見通しが立ってきました。この度は計測機器を製造する企業様を訪問し、これまで成果と今後の協力体制についての意見交換をしました。真のイノベーションとは、既存の原理や技術の延長線上にはなく、目的や要件に適った技術や原理の適用できたときに不連続に起きるものと言えるでしょう。河川の観測法の真のイノベーションとそれに基づく洪水時の河川の挙動の解明に向けた研究をさらに加速させたいと思います。この度の訪問に対して手厚い準備をしてくださった企業の皆様に感謝申し上げます。
大阪大学で開催された水工学講演会において3件の研究発表を行いました。どの研究成果も独自の問題設定もしくは独自の研究方法を特徴とする研究内容でしたが、期待以上の反響や質問を得ることができ、今後の方向性を確認できました。また、11日夕刻にはフェイズドアレーレーダの第一人者である大阪大学の牛尾知雄先生よる特別公演があり、研究とは、心配に対する恐怖に負けず、また、常にTop Scienceを目指すべしという締め括りに大変感銘を受けました。
宇宙線ミューオンを用いたマルチスケールイメージングの確立を目的とした 科研費・学術変革Bの領域会議を胎内市において合宿形式で開催しました。この研究領域に関係する研究者とその研究室に属する20人以上が一同に会し、予定のアジェンダを大幅に上回る熱心な研究発表とそれに対する討議を行いました。この領域会議に参加するたびに刺激を得ています。
連休の合間の開催となりましたが、今年も朱鷺メッセにおいて、土木科学シンポジウムを開催しました。今年の本会の特色は、例年に増して土木以外の研究分野の方の参加と発表を充実させたことです。今後、建設関連業においては、人材確保の人の数の確保に加え、従来の土木工学の学問体系では解決ができない、流域治水のための計画策定で必要となる諸技術や以前から懸案となっている各種構造物の維持管理で必要な技術開発のための高度人材の必要性がますます高まることが予想されます。これらの人材の質の問題の解決を本会では目指すことして閉会としました。ご参集の皆様、開催にあたりご協力をいただいた皆様に感謝申し上げます。
長岡市で開催された 土木学会新潟会において合計で12件の研究発表を行いました。本年4月に本研究室に配属となった工学部4年生にとっては初めての対外発表でしたが、発表と質疑応答のどちらも大変に立派でした。
2023年3月までに信濃川の10kmほどの区間を一体かつ同時に実測する観測網の建設しました。2023年は目立った豪雨がなく、有効に機能する場面はありませんでしたが、2024年の春の融雪期や夏季の洪水に向け、この観測網の動作確認を行いました。
2022年8月3日から4日にかけて荒川流域では記録的な豪雨がありました。特に旧坂町の中心部では深刻な浸水被害が発生しました。また、荒川本川では河口部の砂州が消失しました。本研究室では、昨年12月より、この河口砂州の再生過程の実測を開始しました。現在までに、冬季の季節的な風浪によりどのように河口砂州が再生するかが徐々に判明してきました。
建設関連業界の三大紙の一つの建設通信新聞に「土木人材の未来」という記事が今日から3日続けて掲載されました。建設通信新聞社のご厚意で誌面に掲載された記事を提供いただきました。ぜひご覧ください。
9月に広島で開催された土木学会全国大会の優秀発表者に送られる優秀発表者賞を博士前期課程1年の住谷翼君が受賞しました。
今回の住谷君の研究は、河床波の発生条件をPeclet数という物理量を用いた検討するもので、住谷君のプレゼン力と研究内容の両面が評価されて受賞に至りました。おめでとうございます‼️
2020年春から電波を用いた実河川の観測を開始し、洪水時の河川の物理量を昼夜を問わずに定量化できることを明らかにしてきました。これまでの成果を踏まえ、国交省が管理するを信濃川を一体に観測する観測網の建設が可能かどうかを判断するための現地踏査を始めました。信濃川は国内屈指の大河川かつ中流区間は河岸段丘を流れるために標高差が大きく、機材の設置が容易ではない区間があることが分かってきました。解消すべき課題は多くありますが、この観測網が実現すると、信濃川のような規模が大きな河川の洪水時の河道の変形や洪水の滞留などを初めて実測することができ、河川工学への大きな貢献が見込めます。
博士課程前期2年の関君の先日のDC1の採択とPhysics of Fluidsの掲載を祝う会を開催しました。関君の益々の活躍を期待しています。
流体現象を把握する方法として、測定器具を用いた実測もしくは数値シミュレーションが用いられます。測定したり計算したりした流速の値から流れの状態を把握する一つとして流線を用いることがあります。流線をわかりやすく示す方法の一つとして線積分畳み込み法というものがあるそうで、さっそく試してみました。もはや絵画のような美しい結果が得られました。
修士2年の関翔平君を第一著者としたNovel hypothesis on the occurrence of sandbars (doi:10.1063/5.0171731)がPhysics of Fluidsに登載されることが決定しました。この論文の流体力学への貢献は、河川の普遍的な物理である河床波や蛇行の発生の起源が水面における自励的に発生する定在波であることを細密な模型実験により特定したことです。河川における河床波や蛇行の発生の起源は、1960年代以降、砂礫で構成される河床や河道における生来的な不安性と考えられてきました。今回の成果は常識とは着眼を逆転することにより得たものです。河川における河床波や蛇行は、多様な流れを生み出し、豊かな生態系の生息場となるものですが、一方で、洪水時には河道の損壊を助長するものでもあります。今回の成果は、洪水が流下しても壊れにくい河道の設計の指針を得る上での非常に重要な知見です。
Physics of Fluidsとは流体力学分野のトップジャーナルです。
大学の大学院生は、毎年9月末にいわゆる学振(日本学術振興会特別研究員)の発表があり、ソワソワです。当研究室の修士2年の関翔平君が見事に学振DC1に採用となりました!土木工学の水工学関係の採用数は全国で3件程度という狭き門を無事に通過しした。今後の益々の成長を楽しみにしています!
工学部4年の大川原君は「冬季波浪による荒川河口砂州の再生過程」、清水君は「開水路流れの支配方程式の観測ビッグデータからの抽出」という題目で卒業研究の中間発表を行いました。研究発表の良否は、質疑応答にすべてが集約されると言えますが、2人とも立派な質疑応答でした。2月の発表会が楽しみにです。
新潟は、全国や世界に誇るいろいろな一番がありますが、その一つが海岸線での日の入りです。例えば、切り絵画家の藤城清治さんは新潟の日の入りに魅せられて大作を制作しています。この時期は1年間の中でも美しい日の入りをしばしば見ることができます。
市民大学というところで話す機会をいただき、今年の新潟市の夏がどれほど暑かったかを調べてみました。
細線が1882年から2022年までデータをジェットカラーで着色、青と赤の太線が2023年のデータです。上段がその日ごとの最高気温、下段がその日ごとの最低気温です。過去に今年くらいの夏がなかったかといえば、そうともいえないことがわかります。もう少し詳しくこの図を見ると、最低気温は年々上昇傾向にあることがなんとなく見えます。一方で、最高気温は年によって大きく変化していることがわかります。また、降水量が少ないことも今年の夏の特徴でした。同じように140年ほどを振り返ってみると、まず久しぶりの渇水状態だったことがわかります。また、このデータの期間内全体で見ると、同じくらい雨が少なかった年は10回以上はありそうです。どうしてもその年の現象だけから考えがちですが、人はわずか100年程度のデータしか持っていませんが、せめてそのデータの中である年の気象がどう位置づけられるか俯瞰的に思考することが不可欠でしょう。現在の気候の状態は、病気に例えて急性なのか慢性なのかと言うと、慢性のものと言え、じっくりと腰を据えた対処が必要と言えそうです。
科研費・学術変革領域Bのメンバが物理学会内に企画したシンポジウムで登壇する機会を頂きました。まず、学術変革領域Bで実施している研究内容に物理学会の人たちが高い関心が示してくれていることが実感できたことが良かったです。また、発表内容に対し、いくつかの本質的な質問やコメントを頂けたことも良かったです。他の研究グループが企画したシンポジウムを聴講しました。物理学としては当然ですが、断片的な観測事実から、巧妙に仮説を立て、それを数理的に説明する鮮やかな論理構成に感心し続けでした。どの講演も素晴らしく、日本の底力を感じました。
毎年恒例の土木学会の全国大会に参加し、大学院の1年生以上のメンバがこの1年間の成果を合計で10件発表しました!
今年の春から次世代機材の導入の準備を始め、初めて実地での試験観測を行いました。その観測結果は、紙面上での機材の仕様以上に良好でした。河川の物理の大きな謎は、直線の河道はこれを維持できず、やがて蛇行を始めることです。この新型機材は、実河川における蛇行の発生の起源の特定への大きな貢献が期待できそうです。
村上市の山中の山熊田というところへマタギ文化の見学の目的で行く機会に恵まれました。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、人生観を一転させる経験となりました。山熊田の集落でも日常生活は流石に現代文明を活用しているものの、マタギの仕事は自然を知り尽くしていなければ成立せず、今でも集落の人たちは、ある日突然現代文明がゼロとなっても生きる力を備えているように感じました。集落の人たちからお話を伺い、様々なことに気づく力、察知する力、危険な自然と対峙するために仲間を思いやる心を色々な場面で感じました。これと比べていったい自分には何をする力があるのだろうかという根源的な問いを考えながら山熊田を後にしました。
産官学の融合体により建設関連業における高度人材の育成を目的とした「水ラボ」の活動は今年で3年目となりました。毎年現地見学などのイベントを開催しており、今年度は、国土交通省本省、国土技術政策技術研究所、衆議院議員との意見交換のために上京しました。
いずれに意見交換においても、今後の建設関連業界をリードする高度人材の育成の遅れとその人材が活躍できる実務機関の整備の遅れ、革新的な技術の研究開発の停滞などが共通の課題として浮き彫りとなりました。社会において建設関連業が担当するインフラ整備と維持管理は、すべての社会活動に直結するものです。水ラボのますますの活動が必要となることを再認識し、帰路につきました。
40人近くが上京する大掛かりのイベントの事務局を引き受けてくださった小野組の皆様に感謝申し上げます。
部屋のあちらこちらに蟻塚状態になっている本を書棚に戻した。その途中で何度も手が止まった。もっとも片付け作業を長く中断させたのは「流体力学・今井功」だった。何度読んでも、唸らされる箇所がある。どうせ読むなら流行りの本より、名著を何度も読んだ方が良い。
珍しく誰もいない研究室。あっという間に春学期が終了。後半戦も狙いの絞り込みを常に心がけてしっかりと成果を上げていこう。
当たり前だが、夏になると「今年」は暑いとあちらこちらで聞く。気候変動が話題とされる時に、最近が「暑く」なった根拠の一つとして示されるのは過去の気温の観測記録である。ここで用いられるのは「平均気温」である。一日の気温は最低と最高の気温も記録されており、気象庁が公開しているそれらのデータをそれぞれ図化してみた(気象庁が都市化の影響が少ないという石巻、銚子、飯田、浜田、彦根、伏木、多度津、宮崎)。この図を見ると、暑くなっているというよりは寒く無くなっているというのが正しい認識ではないだろう。今、「暑い」と感じているのは、誰かが暑いと言ったことに心理的な影響を受けてそう感じているだけかもしれない。皆で今年の夏は「例年並み」の暑さと口にすれば、体感する暑さは和らぐかもしれない。
先送りにしていた分離型キーボードのメンテナンスをした。分離型キーボードを常用するようになったのはちょうど1年前からである。振り返ってみると、この1年は作文仕事が多かった。もしいまだに板チョコのような普及している一体型キーボードを使っていたら負傷していたかもしれない。今のところ、分離型キーボードは、パーツを集めて自作する形式で、大手のメーカーによる量産品はほとんどない。分離式キーボードを使うようになり、ほとんどすべての消費という行為は誰かが作ったものの中から選んでいるだけであることに気づいた。モノによっては、もっと使用者の要望が容易に反映できる仕組みや、そもそも色々なモノの自作文化がもっと広がってもいいと思う。
新潟の日没は世界でも有数の美しさという。ちょうどマジックアワーの時間帯に海岸線を走っていたので、海岸線沿いの駐車場に入って、一枚パチリ。カメラロールには同じような写真も何枚ある。だけど、やっぱりマジックアワーに遭遇すると、それは美しく、記憶だけでなく、写真としても記録してたくなる。
信濃川で実施中の堤防の宇宙線観測のメンテナンス作業をした。この日の空は、写真で見ると青空と立体的な雲が綺麗だった。しかし、作業は、炎天下のもとで、とても過酷だった。2021年秋から始まった観測は一区切りを迎えた。その成果をICRC International Cosmic Ray Conferenceに発表した。ついに論文の形でも世に出る。また、今年の秋以降はこれまでの観測で得た知見を反映した新たな観測を開始する。
2011年の新潟・福島豪雨がきっかけとなり、研究手法に数理解析だけでなく実測も追加することが不可欠だと考えるようになった。その手始めに、実験水路の製作、測定手法の開発を始めた。その本格的な始動はちょうど10年前になる。時間が流れるのは早い。この取り組みは奇跡的というほど発展し、この数年で模型実験と実河川のそれぞれにおける空間的に細密かつ時間的に高頻度の測定法を確立しつつある。当時、こんな測定法を手にするとは全く考えていなかった。
夏の森林の緑が美し過ぎた。
技術革新のスピードが凄まじい。ますますコンピュータによる集中処理が加速している。わずか数年前にはほとんどこんなんだった商用カメラさえコンピュータから完全制御が可能となった。
「君たちはどう生きるか」と同名のアニメーション映画が公開となった。これをきっかけとして原作を読んだ。模範的な日本人の姿がぎっしりと詰まっている。この本を読むと、これが書かれた80年以上前は、高潔な模範が社会全体でしっかりと共有されていたことが想像できる。令和の今をコペル君の気持ちで気高く生きよう。
2020年4月から信濃川において洪水中の水理と河道形状を細密に測定する手法の研究を始め、当初の構想通りの結果が得られることがはっきりしてきた。この成果を踏まえ、次の段階にステップする構想を河川事務所と練り始めた。まだ机上の空論だが、理屈の上では「水害の克服」ができるはずである。
新潟日報に最近の研究成果と今後の展望について記事にしていただいた。実は春から少しずつ担当の記者さんと話を始めて完成した記事である。7月17日朝刊の「深掘り・深読み」よろしければご覧ください。
早出川で始まった、河川が洪水を繰り返し経験して自然に出来上がる河道の形状を利用した河川改修を新潟県庁と共同研究し、その成果が能生川と魚野川に実装されている。どちらの河川も模型実験で得られた結果の通り、コンクリートのブロックは一切用いていないにもかかわらず非常に安定した状態が継続している。
勝手に志を共有できていると思っている方が本務地の東京に戻ることになり送別会をした。志は、これまでの経歴や専門分野とは全く関係がない。正しいと信じる道を躊躇なく進もう。
にいがた市民大学でお話しする機会を頂いた。参加者の皆様は自然災害に対して人一倍の関心をお持ちなので、実はお話しする内容選びは悩ましいのです。
梅雨期の堤防の内部状態を探ることを目的とした宇宙線観測の準備を行った。その後、夕食を食べながら信濃川沿いの気持ちの良い夜風にあたりながらこれから1年間の研究計画を議論した。
阿賀野川の支川の早出川において、2016年夏より、自然河川の平面形状が緩やかな曲線形状を描くことに着想を得た流路の制御工法の実証実験を続けています。この実験は開始から7年目を迎えますが、この実験以前に卓越していた交互砂州の発生を現在でも抑制し、流れを断面中央に誘導する河道形状が現在も維持されています。写真の中央を注視すると、河道の厨二院に向かうV字型の流れを確認できます。もう一枚の写真は、大河津資料館に展示されていた鮒などです。生物への配慮も常に意識していたいものです。
ようやく2022年度に得られた研究成果の論文投稿と、それに基づく次年度の研究費の申請手続きが一段落し、久しぶりに研究室全体で懇親の機会を持つことができました。1年あっという間です。有限の時間の中において、常に、今何に注力すべきで、惜しくても何を手放すべきかを考え、少しでも前進できるように努めたいと思います。
異分野融合の体制で実施した研究成果をREALIZATION OF DIGRAPH FILTERS VIA AUGMENTED GFTという論文にまとめてIEEE ICIPという国際会議に投稿していましたが、本日採択の連絡がありました。IEEE ICIPとは採択率が4割程度のIEEEの画像・映像信号処理の最も大きい国際会議の一つです。
3月から準備を始めたある仕事が本日〆切をを迎えました。この仕事は、異分野融合の共同研究者の方々と進めてきたもので、彼らは熱意と能力のどちらにも優れ、オンライン会議などでは全く気を抜けません。この数ヶ月議論を重ね、この仕事に着手した時には全く想像していなかったような地点に到達することができました。やはりどこにも近道などはなく、壁を越える方法は諦めず粘り強く取り組む以外にないようです。
「北陸の視座」という機関紙に談話を掲載していただきました。主に土木工学の研究力の回復の必要性についてお話ししました。その理由は、建設関連業においては担い手確保が重要課題の一つですが、研究力・技術力の強化も同等の重要な問題だからです。この10年以内に研究力や技術力の強化に関心が向けられなければ、大学もかなり体力が低下してきたいるため、おそらく土木工学の研究をする人とできる人は絶滅する未来が現実になってしまうと思います。
昨今の社会的な制約により3年ぶりに同業の大先輩と会食する機会に恵まれました。本業の話題から共通の趣味の話題まで幅広い会話が続き、気づけば終電を逃していました。この大先輩のお話は、会話の一つ一つにちょっと普通では思いつかないような独自の視点が織り込まれていて、本当に学ぶことが多いのです。今後ともご指導よろしくお願いします。
2022年8月に記録的な洪水となった荒川の被災箇所を巡る機会に恵まれました。この洪水により荒川が氾濫することはありませんでしたが、荒川の各所が大きく変形し、治水の根幹は河道であることを改めて実感する機会となりました。羽越河川国道事務所の皆様、この度は大変有り難うございました。
2021年から始まった、MSMIという、宇宙線ミュオンを用いた基礎研究と社会実装の研究は順調に進み、このたびKEK・高エネルギー研究所が主催する記者サロンというイベントで、土木工学が宇宙線ミュオンに期待することについて説明する機会を頂きました。
旅の道中で思いつきで脇道に入ってみたところ、映画のセットやジオラマのようななんとも美しい美しい景色に遭遇しました。この河川は過去に被害があったようで、完全な自然状態ではありませんが、風景としては自然のものとして受け止められるものだと思います。自然と人の共生の理想とはどんなものだろうと考え込んでしまいました。人の河川や流域の理解にはまだ深化の余地があり、この深化が一定を超えた時にパラダイムシフトを起こせるのでしょう。
佐渡における自然再生と地域を持続させる様々な取り組みの現場で奮闘する当事者の方々からお話を聞く機会に恵まれました。同じ事業に取り組んでいても、地域によって考え方や、得られている成果が対照的である点が大変に興味深かったです。特に、半農半漁で棚田の保全に取り組まれている方々の積極的な姿勢には心を打たれました。あいにく滞在中は天候に恵まれせんでしたが、この時期の佐渡はどこへ行っても新緑が眩しく、全く天候のことは気になりませんでした。佐渡は我が国の10年後をすでに見せてくれているように思い、感慨深い気持ちで新潟に戻りました。
ものすごいスピードでどんどん「目」が進化しています。
関西からのお客様を迎え、電磁気学を用いた地球物理の様々な測定法についての幅広い意見交換を行いました。議論が深まっていくと、お互いが日常的に研究対象としている物質やスケールは全く異なるものの、両者の間にいくつもの共通項が存在することが分かりました。このような共通項は、普遍的な価値が高く、大きく展開する可能性が大きいものが多いです。自然現象における共通性を論じる論文をそろそろ書く時期を迎えているのかもしれないです。
2020年4月から開始した信濃川においてマイクロ波を用いた河川の物理の観測を開始し、その概念実証の見通しが立ち、2022年秋より、観測機材の増設により10kmほどの信濃川を同時に観測する観測網を建設していました。この度、これらの機材を接続する回線が開通し、オンラインによる制御が可能となりました。人にとってこの観測網は、洪水中の河川の挙動を昼夜を問わずに観察できる初めての「目」と言えるものです。同観測網の建設に積極的に協力してくださった関係者の皆さまに心から感謝を申し上げます。
2021年秋から始まったミュオンによる堤防透視の研究ですが、関係する方々から想定する以上に強力して頂き、そのお陰で奇跡的と言っていいほどに順調に進んでいます。本日、冬季中の観測を終え、原子核乾板の交換作業を行いました。また、これまでの成果を論文発表する準備も開始し、その一環として地上据え置き型の三次元スキャナにより堤体と樋管内部の測定しました。また、今後の研究構想と、測定能力の強化方法についての意見交換を行いました。
本研究室が開設されて今日で満14年となりました。当然ながら開設当時には二つの異分野融合研究の実施は全く想像していませんでした。今後も常識から見れば無理だと思われるような理想の目標を掲げ、達成までの過程において困難や逆境に遭遇してもそれを何とか切り拓く努めを続けたいと思います。これからも変わらぬご支援とご指導をよろしくお願いします。
新潟大学内にビッグデータアクティベーション研究センターが開設され、丸5年が経過し、それを記念するシンポジウムが開催されました。村松教授と早坂教授と始めたARCEプロジェクトを紹介する機会を頂きました。会場には全く想像もしていなかった多種多様な方々が参加しており、その方々と有意義な議論ができたほか、新たな出会いがありました。実は、本センターの開設時にはロゴマークの募集があり、こちらで提案したものが採用となり、現在まで使用されています。また、同時に、様々な分野における表層上は価値が気付かれていないデータから価値を引き出す研究をするセンターであることを示す名称も提案しました。今、時代はデータが物事を主導する変節点に差し掛かり、これを追い風とした河川の理解の深化と、過去に例のない制御法の研究を続けたいと思います。
人として生きていて最も幸福感や充実感を感じる瞬間は、誰かから頼りにされた時だと思います。20代でこれができる人は多くありませんが、この方向性を目指していればそう遠くないうちにできるようになっていると思います。もう一点は、年齢相応以上の大人であることをいつも目指すといいと思います。大人の目安にはいろいろな言い方があると思いますが、一つは、大人は自分以外のことも自分のことと同じくらいの想像を巡らせることができ、その上でたとえ自分一人でも言動や行動ができることだと思います。誰かから聞いた話をそのまま鵜呑みにせず、自分の頭で真偽の判断をその都度できる大人を目指してください。近い将来、一緒に仕事ができる日が来ることを楽しみにしています。本日はおめでとうございます。
普段の業務では接触がほとんどない業界の方々と談話をする機会を頂きました。各人の日常の仕事内容は全く異りますが、談話を重ねるにつれて各人の根底の志とその高さは同様であることが分かり、大いに盛り上がりました。高い志は自然と集い、その集いからそれぞれの持ち場での難局への挑戦の勇気が生まれるように感じ、再開を誓いました。
2021年春より、かつてない規模での博士学生の支援プログラムが国策として始まっています。この背景は平成年間における日本の科学技術の国際的な地位の相対的な低下があります。本プログラムの目的は、日本の科学技術を回復させることです。本日、このプログラムの成果報告や今後の方向性を議論するシンポジウムが開催され、当研究室の博士課程2年の茂木大知君がパネラーに選出され、1) 博士課程に進学した理由、2) 博士研究を発展させるために必要な能力、3) 博士学生の支援にどのような改善が必要かのそれぞれについて発言しました。このうち、2)について『情緒』と回答し、会場を唸らせた場面は大変に印象的でした。
他国の博士号の取得者数を増加傾向であることに対し、日本は世界で有数の経済大国と言われるものの、博士号の取得者数を減少傾向です。研究は特別な営為ではなく、博士取得者は特別な存在ではないことがまず日本全体広く理解され、さまざまな分野の研究が当たり前に活発に展開される風潮のきっかけ作りに貢献したいところです。
2022年度は二人の修士と一人の学部生が研究室を旅立ち、その代わりに新たに二人の学部生が加わります。昨日は、これらの学生たちの毎年恒例の送別会と歓迎会を行いました。研究活動といろいろな行事で学んだことを活かし、場面に応じてくっきりと相手の様子を想像して、人ならではの気遣いができる大人になって欲しいと思います。社会に出る3人の社会での活躍を楽しみにしています! また、新たに研究室に加わる二人の新四年生の成長もまた楽しみです。
中央大学の山田正機構教授を招き、未知の河川の物理について、流体力学的な観点と、データ科学の観点の両面から真剣な議論をしました。日本は自然科学のさまざまな分野において重要な研究成果を生み出しており、その一つとして、自然現象の本質であるカオス現象を記述できる方程式として、上田の式と蔵本-Sivashinsky方程式は非常に有名です。実は、山田教授は、40年以上にKS方程式よりもさらに自然現象を普遍的に記述できる方程式を独自に導出しています。山田の式は、自然界の「モノの形の始まり」を普遍的に説明できる可能性があり、未知の河川の物理の解明において重要な役割が期待できます。また、議論の各所において、複雑に入り組んだ自然現象の数理的な考察や記述の方法を学ぶことができたことも大きな収穫でした。
加湿のためにストーブの上にミルクパンを載せていましたが、いつの間にかに干上がってしまいました。その底には、地図上で見るような河川の平面的なカタチとそっくりのものが自発的に形成されていました。ミルクパンの底における自発的的に形成されるカタチと、河川において自発的的に形成される流路の平面形は、共通の力学的機構で結ばれている可能性が予見されます。このような物性とスケールが異なる物理における共通性こそがプリゴジン、ローレンツ、蔵本由紀、ストロガッツらが発展させてきた非線形科学の本質だと思います。せめて河川におけるさまざまな形状の発生や発達の機構の解明は自分たちの手でしたいものです。
日本の河川業界で最も信頼されかつ最も真剣に日本の河川について30年以上に渡り考え続けてきた方へ最近の研究成果を説明する機会に恵まれました。説明した研究成果のどれについても非常に好意的に理解して頂き、控えめに言って感無量の気持ちとなりました。夜と霧を著したフランクルは、偉大なる目的こそが生き残る唯一の道標、と言っていたと思います。これからも前人未踏で困難な道であっても、それが王道ならばその道を迷わずに逞しく歩み続けたいと思います。
ちょうど1年くらい前に、日本の土木工学の研究力を世界に発表された論文数から把握する試みを行い、2018年から2020年の3年間に発表された論文数の世界ランキンが14位であることが判明し、大変に愕然としました。最近、この世界ランキングが一時的なものなのかどうかを比較的手軽に把握する手法に気づき、1980年から2020年まで40年間のランキングを整理してみました。その結果、2000年頃までそのほかの自然科学の分野と遜色のない順位を維持していたことが分かりました。しかし、最近の20年ほどは12位前後の順位を維持し続けていることが分かりました。このデータの整理により、毎年確実に研究力を向上させている国は、世界に16カ国ほどしかなく、日本の土木の12位という順位は非常に芳しくないものであることも分かりました。一方で、これらのデータの統計に過程において、10年ほどの期間を経て毎年一定数の論文の発表を可能としたいくつかの国々が存在することも知りました。このことは、日本の土木業界の全体がこれから10年かけて研究力を回復させるぞと一致団結できれば、以前の研究水準を回復させられる可能性は十分にあると思います。また、どの国もどの分野も最近のデータ科学という手段の初心者なので、ある意味で公平なスタートラインに立っていると言えるます。がんばろう日本土木。
マルチスケールミュオンイメージングMSMIの研究プロジェクトは、着実に成果をあげて、次のステップに向かっています。今日は来年度の研究構想について話し合うオンライン会議がありました。この会議はいつものことながら素晴らしく内容の充実した会議だったのですが、次の研究構想を考えるにあたり「強い力と弱い力」についての話題提供がありました。重力と電気引力のどちらがどれくらい大きいかは、流体力学の範囲ではわざわざ考える場面はなく、非常に勉強になりした。学部の講義は、人間は地球上のさまざまな物事をだいぶわかっているような誤解を与えるような話し方をしがちですが、意識的に人間はごく限定的な知識しか持っていないと話した方がより意義のある教育となるのでしょう。
この数年で、ビッグデータと人工知能の組み合わせが非常に強力ということが世界中に浸透しました。ARCEでは、STにより測定された水面の観測ビッグデータの信号処理により、底面の形状を推定できることを2019年にIEEE ICASSPで初めて発表しました。移動床の水理学に世界で初めてデータ駆動の手法を適用した研究です。この度、その後継の研究が2023年のIEEE ICASSPで採択となりました。ICASSPはIEEEの信号処理ソサエティのトップカンファレンスで、元来から採択が非常に難しいです。その上、近年の人工知能関係の研究が非常に活況となっているため、IEEE ICASSPでの採択は非常に難しい状況となっていましたが、無事の難関を乗り越えることができました。
本日、4人の学部4年生の卒業研究の発表会が無事に終わりました。4人全員が1年間をきっちりと走り切り、今日の発表会ではその間に積み上げてきた成果を自分の言葉で丁寧に説明する姿が印象的でした。これで研究室の一年が一巡しました。そうかと思えば、間も無く次の世代の学年の研究室に配属が確定します。ひと時の途切れもなく次の一年が始まります。どんな一年になるのか楽しみです。
土木工学においては、水理学という学問により、河川などの流体の運動を体系的に学びます。最近の模型実験で、この水理学の基本中の基本のとある現象の実在を疑うべきことを示唆する結果を得つつあります。面白くなってきました。
近年の河川研究室の独自性の一つは、観測ビッグデータを活用した研究です。現在、卒論発表会に向けまっしぐらの時期です。そんな中で、コードの書き方をほんの少し誤っただけでMacのメモリを一気に使い切り、Macの動作が固まる現象に遭遇しました。一つのプログラムの動作に26GBってすごい時代になりました。
Web of Scienceを用い、この25年ほどの日本の土木工学の分野から世界に発表された論文数を集計してみました。その結果、2000年前後において、日本の土木工学の分野からは発表される論文数の合計は、世界の6%ほどを占めていましたが、最近では2%まで低下していることが分かりました。昨今、日本全体での研究力の低下が問題視されてますが、土木工学の論文数の下落は大きく、その他の工学や理学の分野と比べ、研究力の低下が著しいと言えそうです。がんばろう、日本土木。
2022年9月の名古屋大学でのMSMIの領域会議に続き、今回は東京大学で領域会議が開催されました。今回の会議では、ミュオンを用いた物性の測定、銀河系外の天文の測定、ミュオンのシリコン検出機、最先端の情報数理のそれぞれのトップランナーの研究者よりお話頂きました。非常に幅広い話題が議論されましたが、登壇者と聴講者の双方の説明力が素晴らく、この研究領域のますます発展を参加者全員が感じる会議となりました。
新潟大学では、毎年、若手データサイエンティストコロキウムを開催しています。本研究室は3件の発表を行いました。このうち、博士課程1年の田所祐輝君が「信濃川中流部を対象とした安定河道の探索」という題目の発表を行い、ポスター大賞を受賞しました❗️おめでとうございます‼️同コロキウムは、4年前から開始した行事で、本研究室は4年連続の受賞となりました。
少し前の記事ですが、土木学会誌の2022年12月号の特集記事は、「土木のイシュ31」でした。河川工学を専門としていれば、昨今の水害への対応が最優先課題との認識となって当然ですが、土木工学全般の観点からも水害への重要な課題と認識されていることにホッとする気持ちとなりました。一方で、この図は、多種多様な課題が顕在化しているにもかかわらず、これらを一向に克服できないこと、また、各所での担い手の確保の各々についての打開策が明確となっていないことが浮き彫りにしたようにも感じました。土木の駆動源は、工学と科学であることを踏まえると、近年の急速な科学技術の発展を追い風とし、技術至上主義への転換が問題解決の方策の一つではないでしょうか。
今日は朝から夕方まで打ち合わせや会議が連続する1日でした。お越しになったお客様から差し入れを頂き、とても嬉しい気持ちとなりました。有り難うございました。
予告はあったのですが、Physics of FluidsのEditorから手書きの年賀状?が本当に届きました。この時代においてアナログ・モノが海を渡って届くとグッとくる。しかし、半分くらいは読めない・・・。
謹賀新年。2022年もまたたくさんの方々の献身的な助力のおかげで、数々の困難を乗り越えることができました。ご協力を頂いた方々に心から感謝を申し上げます。また、2022年は、海外のトップジャーナルと国内の査読付き論文に多くの成果を発表できました。これらの成果は、2023年以降の研究を発展させる基盤となるもので、2023年は、不明な河川の物理の解明と、これに基づく河川の制御法の確立に向けた研究を強力に推進したいと考えています。自然科学の発展の経緯から水工学を俯瞰すると、明らかにモデル駆動解析を偏重し、これが学問分野の発展の妨げの一つになっていると思います。すべてのモデルは仮説から演繹的に構築され、そのためにモデル駆動解析では「部分の総和は全体と一致しない」という問題を克服できません。 近年の本研究室の特色は、自然科学全般においてもまだ実例が少ない実現象の観測ビッグデータの測定法の確立です。2023年は、観測ビッグデータを手段として、これまでのモデル駆動解析の研究成果の実証や、モデル駆動解析とデータ駆動解析を融合した新たな研究手法の考案など、データ駆動を手法とする研究成果の発表にも努め、科学全般にインパクトを与える野心的な研究もしたいと考えています。2023年も引き続きのご支援をよろしくお願いします。