能生川の被災状況調査

2017年の夏季から秋季にかけての3度の出水により多数の浸食被害が発生した能生川(糸魚川市)の現地調査を新潟県庁とともに実施しました。

わずか10kmの区間に10箇所もの堤防浸食の被害が発生し、このうちのいくつかは堤内地に甚大な浸水被害をもたらす可能性があったことが確認されました。また、1年の間に3度の出水を繰返して経験したことが履歴効果となり、このような複数の浸食箇所の発生に繋がったことが推測されました。今後は、能生川の基本的な河相の分析と、このような浸食被害を防ぐ方法について調べる予定です。現地調査の案内をして下さった糸魚川振興局の皆さまに感謝を申し上げます。

西日本豪雨現地調査速報

西日本豪雨により広範囲にわたり浸水被害を受けた岡山県真備町において2018年7月11日に現地調査を行いました。

UAVにより被災地を俯瞰すると、調査を実施した7月11日現在も広範囲に浸水の痕跡が確認できました。写真は、高梁川から3.2k地点の破堤部とその周辺の浸水域です。また、写真の手前側に映っているのが小田川の河道で、河道内には5mを優に超える樹高の樹木が多く存在し、洪水の流下の阻害に関係していたことも推測されます。

小田川から2kmほど北側の県道沿いの家屋。屋根の瓦は氾濫流が輸送してきた土によって褐色になり、4m以上の水深になったことが推測されます。このような地点では、一部で有効とされる自宅における垂直避難では安全の確保が難しいことが分かります。

多数の家屋が床上浸水の被害を受け、家財道具はがれきとならざるを得ず、これらの大量のがれきは道路に沿って高く積み上げられています。

被災の特徴

  • 洪水時の小田川の水位は、市街部の地盤高よりも大幅に高くなったことが推測されます。
  • このために広域かつ深い浸水深の浸水被害が生じたことが推測されます。
  • 高梁川との合流点から4kmほどの区間では河道内の樹林密度が高く、これらが洪水の流下を妨げた可能性も考えられます。

今後に向けて

  • 河道改修をはじめとする治水事業の速やかな実施と、定期的な樹木伐採などの河道を安全な状態な維持を可能とするために社会全体で取り組む。
  • 夜間の高齢者の方々の避難支援する共助の仕組み作りの強化。
  • 小田川と同様の天井川は全国各地にあり、今回の水害を他人事で終わらせない 。
  • ハザードマップを用い、家族で浸水範囲と避難場所、水害発生時の連絡方法の確認する。いざという時にはその準備を活かし、周囲の避難を促す率先避難者の役割を担う。
  • 災害調査におけるUAVの活用は、調査時間と調査人員の大幅な縮減が可能となり、ある種の生産性革命を享受できる。

この度の西日本豪雨災害により被災された方々に心からお悔やみ申し上げます。また、行方不明の方々が一刻も早く見つかることを心からお祈り申し上げます。