Hiro Yasuda

安田 浩保

略歴

2021年4月 新潟大学 研究推進機構 研究教授
2011年4月 新潟大学 災害・復興科学研究所 准教授
2009年4月 新潟大学 災害復興科学センター 准教授
2007年1月 Clarkson University Research Associate

2003年4月 北海道開発土木研究所河川研究室 研究員

1974年3月 栃木県生まれ。

業績

好きなこと

本を読む、文章を書く、プログラムを作る、数学の完全性を実感する、車を運転する、美味しいもの(食べる、作る)、写真を撮る、音楽を聴く、夢想する、美しい景色を見る、大きな樹を見る、杢を見る・触る、季節の移ろいを感じる、いい香りに浸る、きれいな生地やレザーに触れる。

好きなもの

村上春樹、丸谷才一、小林秀雄、谷崎潤一郎、中村天風、ゲーテ、宇多田ヒカル、Sade, Bill Evance, Brian McKnight, Quincy Jones, Babyface, Incognito, Michel Petrucciani, Hélène Grimaud, Maurizio Pollini, Beethoven, Macintosh, macOS, iOS, vtk, Carrera 4S, M5, EOS R5, Cal.68, Custom, 表情が豊かな川、滝、日の出と日没、天の川、雪景色、庭園、薪ストーブ、鶯、オーク、カツラ、セン、ハルニレ、カエデ、ブナ、ケヤキ、トチ、ローズウッド、チーク、カエデ、ホワイトリリー、桜、バラ、モクレン、山法師、きゅうり、トマト、オクラ、じゃがいも、さといも、蕪、タマネギ、鰤、桜鱒、きんき、鮭、いくら、鰻、メイプルシロップ、ジャム、モンブラン、黒無花果、林檎、マンゴー、マンゴスチン、桃、こくわ、ハスカップ、ヤマブドウ、アボカド、バルサミコ酢、松の実、アールグレイ、梨山茶、ラベンダー、イランイラン、白檀、ナイルの庭、カレ、ボックスカーフ。

生き方

時間は命、共に繁栄、調和、泰然自若、一期一会、常識を疑う、戦略、全力投球、成果は困難を氷解する、目的のための忍耐、偉大なる目標が困難の克服の唯一の方法、逆境と理不尽は言い訳、諸行無常、目に映る全てのことはメッセージ、共有と相補、矛盾との共存、品格と知性の向上。
If we have kept on walking to improve ourselves for a few decades, we can gradually change everything, eventually we will be certainty what we are. HY-2013

 


こぼれ話(研究活動をはじめた動機)

1996年に都内の建設コンサルタント会社に職を得た。その後、1998年に、茨城県水戸市東部一帯が那珂川の氾濫によって広範囲に浸水した。初めて目にする大規模な水災害の現場は衝撃の連続で、水災害の軽減に対する強い関心が芽生えた。3年間の実務経験を経て、当時の河川工学の技術水準では時間と空間のどちらにも高分解能に河川の物理状態のモニタリングが難しいことを知り、直接計測が難しいのなら数値解析によりかつて実現されなかったほどの河川の状態把握と予測手法を開発したいとの志しを抱き、大学院への進学した。大学院に進学後は、世界に先駆けて津波の数値シミュレーション技術を開発した後藤智明教授の指導を受け、土木工学が扱う流体の数値シミュレーションの基礎的知識を習得した。また、後藤教授の勧めで、河川の物理を理論的に学ぶことを目的に中央大学の山田正教授の指導も並行して受けた。後藤教授と山田教授の教育を通し、自然現象を奥深さと、それを定量評価する物理数学に魅了された。土木工学では河川工学と海岸工学が厳然と区別される。一方で、自然界には物理的境界がないことを当然のように指摘されるなど、自分よがりな非常に狭い視野を転換するきっかけも得た。数理解析のスキルを習得するに従い、土木工学が対象とする様々な流体現象(洪水氾濫、流れによる土砂輸送、流れと波の相互干渉、河口部に特有の密度流)の数値解析を試みた。

博士号取得後は、札幌の開発土木研究所(現・寒地土木研究所)に職を得た。北海道のあちらこちらには、本州ではあまり目にすることのない礫の川原を持つ美しい自然河川と、しばしば発生する凶暴な水害の両極端な側面を学んだ。同研究所の勤務している期間は、世界でも最先端の河川物理の数値シミュレーション技術を確立していた北海道大学の清水康行教授から河川物理の観察方法と数値モデリングを直接学んだ。この経験は現在に通じる大きな財産となっている。このころから、全国各地で毎年のように死者を伴う大規模な水害が発生するようになった。これらの災害現場では、必ずと言っても良いほど流路変動が生じていた。既往研究を調べ、流路変動の機序は依然として物理的に全く説明ができないことを知り、強い衝撃を受けた。このような現場を目前にした熟練の河川工学の実務者たちは復旧こそが最大の貢献との認識で職務に臨む。彼らの職務に対する姿勢は真摯である一方で、自然災害に対する諦観の念を含みながら職務に臨んでいるように見えることがしばしばあった。この事が契機となり、人命と資産の喪失を未然に防ぐために何とか河川の水底面の起伏形状や流路変動を物理的に説明できるようにならないものかを考えるようになった。

その後、2009年4月に新潟大学に着任した。流路変動に関心を持ち続けていたもの、打開策はすぐに得られなかった。しばらくして、地元の三条市や長岡市の金属加工業者の技術者との交流の機会を得て、ちょうどこの時期に科研費・若手研究(A)にも採択され、水表面と水底面の同時計測装置を開発できるようになった。その後、改良を重ね、2017年1月にStream Tomography: STと称する計測システムが完成した。現在運用中のSTは試作機も入れると第3世代にあたる。

人間は見えないものは理解できない。しかし、見えるようになったものは必ず克服できる。独自に開発した計測装置と統計数理モデルの高度な融合を進めることで、長年謎となっていた水底面における起伏形状の自己組織化的な機序を解明できると確信している。せめて人が暮らす場所での水害を無害化する新しい時代の技術を自らの手で確立したいと切望している。


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